細木数子先生のお話は主婦層にとっては六法全書よりありがたい 部門

論争に立ち入るつもりはないんですけどー。

著作権親告罪が誤解されている?」というエントリー。(from 読みゲー)
http://www.machu.jp/diary/20071021.html#p01

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著作権者からの訴えがなければ何をしてもOKというのは誤解

反論→「著作権者からの訴えがなければ何をしてもOKというのは誤解」は私的自治原則に反するため間違い。私的独占排除原則の例外として存在する著作権はあくまでも権利を主張することによって効力が生ずる。

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というやりとりがあったんですが、

文句付けられるまではネットでアニメのキャプ公開してもいいんだよwwwうぇwwwww

とか言いたいわけではなく、これって本当なの?というのが今日のテーマ。といっても法律議論をするつもりはあんまりないけどね。

こういう「俺は法律知ってるんだぜ」というような人の書き込みを見ると、つい信じたくなってしまいますよね?でも、法律の世界って複雑。少なくともこの反論にあるような規定は条文には書かれていないので、これは法律の解釈の問題。

法律の解釈が問題となってしまうと、必ずいろんな意見が出てきます。特にこういう微妙な論点になってくると、法律家の意見がみんな同じになることなんてめったにないわけで。ぶっちゃけ「どうして人を殺したら罰せられるのか」という一見簡単そうな問題に対してすら統一された見解は出てないです。(このへん、東大と反東大みたいな対立がありましてねえ、東大負けてるっぽいんですが(笑))

んで、この見解。もしかしたらこの意見は裁判所の判決で認められた物なのかもしれないし(一応今の日本ではもっとも強い根拠になる)、教科書に書いているのかもしれないし(上の理由によりぶっちゃけあんまりあてになんない)、ただの脳内議論の結果なのかもしれないし(論外)。

確かなことは、こういう書き込みをされてしまったときに法律の素人が本当なのか疑うことはは難しいし、調べることはもっと難しいってこと。(自分でも調べてみたんだけどこの記事のコピペばっかHitしたよ〜)

じゃあどういう仕組みが必要なんだろうな、というのを突き詰めていくと法律と日常をつなぐ新たな展開が見えてきそうな気がするけれど、どうなんでしょう。ビジネスビジネス。

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おまけ:この見解に関する自分の見解

直接この見解について調べることは出来なかったので、ちょっと別のアプローチで。

知的財産権(例外的な私的独占を認める法律ともいえますね)の一つに数えられる著作権、それに比較的似ているのが実用新案権(権利を得るのに登録は必要だけど、審査がない←著作権は登録が必要ない、特許権は審査がある)。

そして、実用新案権を行使する(厳密な意味は解説書を読んでも書いてなかったけど、具体的には侵害の差し止めと損害賠償請求のことだと思う)ためには、実用新案権の登録証明書(のようなもの)を示さなければならない、とされています。(実29の2)

この文脈からすれば、(登録も必要ないためより権利の行使が慎重にされるべきである)著作権を行使するためには著作権を主張してからでなければいけないという解釈も成り立つのかもしれません。

ところが、同時に、実用新案権の侵害による損害額の算定に当たって、故意または重大な過失がないときはその事情を考慮することができる(実29・4項)という規定があり、反対解釈すると「実用新案権を侵害していることを知らなかった場合、つまり権利を主張されていない場合でも損害賠償責任はある」ということになります。

このアナロジーで考えると、著作権に関しても、権利を主張されていない場合に著作権の効力が発生しているかどうかは分からないけれど、侵害していることに対する損害賠償を請求される可能性はある、つまり法的に非難されるべきである、という結論が出てきますけど、どうでしょうか?

(ちょっと著作権法違反事件の判例を調べてみたけど、この結論は妥当っぽい(著作権法違反をしていた期間について、著作権を主張した時期が問題になっていない))

あと、私的自治うんぬんは民事の話なはずで、刑事罰には関係ないとはずというこちらの意見も。
http://d.hatena.ne.jp/odz/20071021/1192976198